田中屋の夕刻日誌
「なぜひとは被災地から引っ越さないのかについての大学講義」

夕刻日誌
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夕刻日誌

文・絵/田中宏明

「今だ◯◯人の人が避難所生活を送っています」
なんて声がいつの時代も聞こえてきます。

これについていつも単純な疑問が思い浮かびます。
まだ、◯◯人の人が引っ越さないでいるの?

大学ヘ通うため東京へ出る、就職のため、
劇団役者をするため、バンド活動をやるため、
家を出て独り暮らしをはじめるパターンはいくつもあります。

そして、夢を追って、安アパートを借りたり、大学生もお金がなくて、大学へいくとしても、親に余裕があるかもわからない。
下宿屋に入り、バイトをしながら大学へいく。
カツカツな生活をしながら、それでも夢や希望を持って生きていく。
そんなことはいつの世の中も当然のように見かける景色です。

それにもかかわらず、被災地の方はなぜ、引っ越さないのでしょうか。
風呂なしアパートでも借りて、バイトをして生きていくことだって当然できるはずです。思考能力が停止していなければ。

※言うまでもありませんが、人はそれぞれ事情があります。一概には言えません。そんなことはもちろん知っています。ただ、それでは話にならないので一概に思うことにします。

僕もアルバイトをして生きていた時代、給料日まで3日間なにも食べ物がないということはありました。
それでも文句なんてありゃしない、人それぞれだ。

とにかく、いつまでも避難所的なところにいるひとは、それを選んでそこにいるという部分があるということを忘れてはなりません。

その思いを考えながら、できることを支援していかなければ、そこにいる人たちへ伝わるものはないと思われます。

ひとはみんな選んでいます。
もちろん自分の責任で。

何度も聞きたいことなのですが、
どこかで安アパートを借りて、バイトをして、生活を建て直せばいかがですかと、言われたときに何て答えるのかを知りたいのです。
それは聞いちゃダメだよみたいな雰囲気があるのですかね。

僕は23歳で実家を追い出されることになり、国立の家賃24000円のアパートを借りて、国立の大戸屋と立川の日高屋でバイトして、なんとか食いつなぎ、その後いまでは見かけない求人雑誌ビーイングで職を探し、就職しました。
ただそれだけのこと。なんのひねりもないそれだけのこと。

なぜしないのでしょうか。

現場に問いかけることができるのならば、僕らの想像に及ばない、エレガントな解答が返ってくると期待してます。
これらはすべて、自分に対して問いかけているのです。

エッセイ 田中宏明(写真家)

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