歩き書き!「田中屋の不動産管理日誌」第15話~営業補償と民法第606条

不動産管理あるある
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前回のあらすじ

災害などでビルに不具合が出て、その修繕により一時的に貸室の使用に支障が出る場合。賃借人が賃貸人に対して営業補償を請求するには、裁判になる可能性がある。そのとき賃借人は、民法第606条を突破しなければならない。

民法606条(賃貸人による修繕等) とは

1.賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
2.賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。

「拒むことはできない」をどう解釈するか

私は法律家ではありませんので、一般論で、このようなものがあるという存在だけご紹介したいと思います。

私の経験(今まで雨漏りや設備のエアコン不具合、漏電による一部停電などありました)では、
まず、賃貸人はビルに費用な工事はしなければならなくて、つまり義務であり、それは修繕する権利があると考えてきました。義務だけ記されていて、修繕する権利がなかったら、「なんだこの穴法律は!なんの交通整理もされてないではないか!(笑)」となります。

つまり、「拒むことはできない」とは、修繕に協力しなければならないというルールであって、「協力はするけど、お金ちょうだい」ではないのです。

みんな協力しているので、営業補償は聞いたことがない。

このような流れとなり、営業補償が成立した事例を知りません。私もいろいろ検索してみたのですが、なかなかこのような事例で営業補償をとれた判決を見つけることはできませんでした。

もし、これで営業補償がとれてしまったら、世の中どうなってしまうのだろうと不安になりますね。なんでも言い張ればお金がもらえるみたいな。台風起きろ、不具合出ろ!なんて、賃借人は思うかもしれません。

賃貸人もいろいろ不安

結局、不具合起きたら賃貸人が修繕、賃借人は協力がひとセットで、それらも含めて賃料設定がされていると考えるしかなのですね。それは
不具合があることとや、台風が起きることや、ビルが古くなることも含めて。

私の経験では、修繕を急いで手配しないビルオーナーは今までいませんでした。ビル側なんとか急いで対応致しますので、お互い協力して災害というピンチの乗り越えていきたいですね。
人類という規模では、災害というものと戦っているなか、人類同士が「金出せ」と喧嘩していたら惨めなものですね。

こんな時代なので

近年の台風の勢力はすさまじく、ニュースでも「命を守る行動を優先」という言葉が聞こえます。

そんな台風が過ぎて、店舗に雨漏りしたビルがありました。(私が勤務している会社の管理ビルではございません)

あるテナントはその被害をしつこく賃貸人に訴えたそうです。
そのビルは全テナント定期借家契約でした。そのテナントは期間満了で再契約まとまらず出ていったそうです。
なぜ、再契約はまとまらなかったのでしょう。

命を守らなければならない自然災害と戦っていて、現に土砂崩れや洪水で命が失われているなか、雨漏りで店舗が汚れたなんてことぐらいで、(お店をやっている人にとってはもちろん店舗大事ですが)
その被害を強く訴えるというのは、賃貸人はゾッとしたかもなぁ、と思いました。
繰り返しですが、店舗も大事ですが、よそでは人が死んでるわけですから、うーん、まぁ、再契約はしたくないなぁなんて、勝手に思いました。
もちろん真相はわかりません。
みんな人間なので。

仲良くいきたいですね。賃借人・賃貸人は敵の関係ではないですからね。

文・写真/田中Mint

吉祥寺 七井橋通り
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