読み切り!プチロマン小説「雨宿りの夏」作/奈良あひる

短篇小説
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短篇小説

=ロマン随筆=ありそうでなくて、それでも起きそうなロマンスをお届けする青春プチロマン小説。きっとどこかで起きている。女の私が言うんだから…

雨宿りの夏

結婚もしていなければ、時間があってお金もすべて自分で使えてっていう20代後半。

仕事だと思えば、汗ってのは邪魔な存在だ。まったく夏ってのは。それでも、休みの日となれば、汗かいても雨に濡れてもなんてことないのが夏。雨宿りの夏

出かけた。はじめちょっとめんどくさかったけど。

どこへでかけたかはこの話では関係ないけど。出かけよう!と一生懸命誘ってくれたので。

車社会のこの町では、待ち合わせってのはね。付き合っていない男と女が待ち合わせするには、どこかの無料駐車場まで行って、そこでどちらかの車に乗ってでかけるの。家まで来たら噂になっちゃうから。ほら、狭い街だから、噂も好きだから。

いかにも雨が振りそうな日にだったけど、バイクに二人乗りで出かけた。それが今回の目的だったので、それはクリアしたいとこ。

バイク乗りの男がこの日をたのしみにしていた。雨が降っていない時点で中止は言いづらかった。降りそうだからやめようなんて。

雨が降った。予定通り?ひとネタ終わったところで。

夏だったからか、雨具はとくに用意していなかった。

雨に濡れたってそれほど寒くはないっしょって。

いやしかし、バイクで走るにはそういうわけにもいかない。風がある。

「雨宿りしていこう」

そんなわけで雨宿りをすることになった。

こんな町では雨宿りと言えばラブホしかない。

「雨宿りをする」という言葉を強調してラブホに入った。

普通にしてしまった。してしまったというか、した。

年下の男と。職場の。

後悔はしていない。

雨が上がればホテルを出て、またしばらくバイクに乗る。

今まで裸で触れ合っていた体に半分濡れたシャツを挟んで。

文/奈良あひる

作者紹介

女に必要なのは断らない勇気。 それからというもの恋のめぐり合わせが始まったまりました。経験をもとにロマンスをお届けします。 井の頭Pastoralにも寄稿してます。

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