女ひとり気ままに旅をしていると、平日か土日かなんてのは気にならなくて、今日は何日なのかもわからなくなっていく。今何月かはかろうじてイメージが着くぐらいで、それでなにも支障はない。
この日は、明日にはこの街を出るとして、ゆっくりすごそうなんて思っていた。
出発の準備なんて大してなくて、ただふらふらと町をあるいて写真をとったり、町の掲示板なんてながめてみたい。喫茶店に入ってみたり。
加恵は歩く道の先に喫茶店の看板が見えて、立ち止まることもなく入っていった。そういう性格というというものが得をするみたいな感覚があったからだ。誰に言われたわでもなく、根拠もなく。
お客さんは、女性3人だけいた。
加恵はメニューも見ずにコーヒーを注文した。
コーヒーはおいしい。餃子がだいたいおいしいように。ひとりで喫茶店に入ると、どうしても他のテーブルの話し声が聞こえる。その内容をネタにするなんてのは、作家を気取る人はよく口にする。
その3人組は全員結婚しているようで、夫の自慢とぐちをお互い繰り返している。
加恵はつまらないはなしだなぁと聞きながら時計を見れば14時30半すぎ。
その女たちは、彼の話をしていた。彼とは夫のことではない。
つづく
奈良あひる
1990年生まれ 渋谷のOL
趣味 短編小説を書くこと
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「女が日本一周する時」第1話