青春プチロマン小説「有楽町の喫茶店の女」第3話 作/奈良あひる

短篇小説

第3話

真司は走った。一目散に。ここで走らないでいつ走るのだという時が来た。結局会えなくてもかまわない。今走らないとドラマなんて起きやしないのだ。

息を切らせながら喫茶店のドアを開ける

店員「いらっしゃいませ」

真司「待ち合わせ…、いや、ふたり」

真司は店内を見回した。いるのか、いないのか。

90年代初頭なら携帯電話がなくて、店内をうろうろ見渡すところだが、今はスマホという文明の利器があるので、送ろうとした。

「真司くん…」

k子だった。

k子「待った?」

真司「今来た」

なんなんだこのベタな会話は。まるで連ドラだ。

時間に追われての喫茶だった。あの頃はそんなことはなかった。金はなかったけど、時間はあったから。

真司はk子と同じものを頼んだ。違うものを注文して、どちらかのあ遅かったら面倒だからだ。

真司「なんか連ドラ思い出したよね。近くまで来たからって、連絡をくれたあたりが」

K子「誰にも連絡しないつもりだったんだけど、有楽町の町並みがを歩いていたら懐かしくなっちゃてさ」

真司「連ドラだったら次どうなるかね」

K子「今夜仕事後に会う約束するんじゃない?」

真司「そうだな、時間あるの?」

K子「ない、すぐ行かなきゃ」

真司「それじゃあ、昼ドラのパターンだな」

K子「何昼ドラのパターンって」

ハンバーグを食べながら

             つづく

作者:奈良アヒル

1990年生まれ 渋谷のサラリーマン

タイトルとURLをコピーしました