土曜の夜は短篇小説(読み切りor連載)

短篇小説
短篇小説

プチロマン小説

住みたい駅には、予算の都合上住めなかった。
その一駅を人知れず埋める、少年雑記的短編小説。お楽しみください

読み切り プチロマン小説
「恋の紹介人」
作/奈良あひる
絵/田中ひろあき

ロイヤルミルクティーがおかれているテーブルの横の窓には、恋人たちが通りすぎていく。

まわりの友達はみんな結婚していってしていないのは妙子ほぼひとりであった。長らく独身をともにしていた由香は半年ぐらい前に、友達の紹介だとかで結婚していった。
出会い系・婚活パーティー・結婚相談所などアプリやらはどうも使う気にはなれず、いつのまにか30を越えて数年が経っていた。いまだに出会うためのツールには頼らず出会いたい願望があるのだろう。できることならば、図書館で同じ1冊の本に手を伸ばし、「あっ」みたいな具合に出逢うものだと信じていたところがある。

紹介かぁ…
紹介というのも軽い気がして、乗り気ではなかったが…

=昨日のこと=
3カ月ほど前に高尾のバーで出逢った宮下とランチを共にしていた。月に2回ぐらいモーニングやランチに行くような、空いてる時間があう年下の男だ。バーで出逢ったのだが、酒はあまり飲まないという。

宮下は紹介したい人がいるんだけどどうかなと話題を出してきた。出逢ったバーでの話の中で妙子が「誰かいい人いたら紹介してよー」と言っていたことの続きとして。

紹介もありかなと思った。
知り合いとあったとき、たまたま一緒にいた人と出逢ったとしたら、それは自然に出逢ったことなのではないかと、理屈っぽいことが頭でまわった。

高田という人の写真を見せてもらい、基本情報を聞いて、妙子は久しぶりに心もはずみ、会うことになった。

=昨夜のこと=
電話がなった。
宮下「妙子さん、あの、もし明日紹介するひとと付き合うことになったらさ、まぁ、その、当然しちゃうよね」
妙子「まぁ、そうね、付き合ったら」
宮下「まぁ、そうだよね…」
妙子「どうかしたの?」
宮下「なんか、それがつらくて…」

つまり宮下は、妙子と体の関係を持ちたいという意味のことを言ってきた。でないと、つらくて紹介できないと。宮下は「そいつはぱっと紹介されただけで、僕が運良く出逢えた妙子さんとしちゃうなんてずるい」ともいった。
宮下は夜になってジワリと脳がそっちへいってしまったのか、妙子は宮下の心情に人間らしさのようなものを感じた。

ロイヤルミルクティーが置かれているテーブルの横の窓には、恋人たちが通りすぎていく。お会計は済ませてある。

さっきまで、宮下と…。八王子のラブホテル、モーニングタイムで。これは高田には絶対な内緒ね、と。

これから、高田と会う。
いや、会う予定。
高田は来るのか。

そもそも高田という人物は実在するのか。
妙子はなんだかばかばかしい出来事に巻き込まれている気もして、笑い飛ばそうとする頃、ストローに唇が触れる頃。

おしまい

プチ官能小説

井の頭Pastoralにも掲載してます。

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