連載プチロマン小説「女が電話に出ない時」第2話

短篇小説
短篇小説

その時電話が鳴った。

女は携帯に目をやると、誰からの着信かを確認して、携帯を男に手渡した

女「出て」
男「え、、、」

それは母国の男だという。

電話の向こうでは異国の言葉で何かを必死に話している。こちらが不思議そうに名乗ると間違い電話と気づいたのか、トーンは下がり、電話は切れた。間違え電話ではなく、携帯を変えてしまったと思ったのかもしれない。

男は携帯電話を女に返した。

男「出ればいいじゃん」
女「いい人なんだけどちょっとね…」

この一連のやりとりにより、今夜これから起こることの流れが、音もなく示されたような男は感じたのだった。
人というもののプライベートの部分に触れたということは近づいたとも言える。

その女とは、仕事の関係であった。
新宿のスナックに行った時、女はグラスの中にチョコレートをセットしていた。こちらの作業が終わりひと声かけた時に、チョコレートをひとつくれた。それが出逢いだった。連絡先も交換した。出逢いとは不思議なものだ。なぜチョコレートをくれたのかはわからない。とりあえずいい意味と捉えた。

一杯飲めば、席料・ボトルサービス料などいれて3万円ぐらいはするお店である。チョコレートひとつで客の予備軍となるならば簡単なものだ。

営業かどうかというのは関係なく、今その女と新大久保のジョナサンへ来ている。お店には行ったことはない。その食事中に女の電話のベルが鳴ったのだ。その女の付き合っている 母国の男から。

食後のコーヒーを飲み終えたら、このあたりに住んでいるという愛子がたびたび行くという場所に行ってみることにした。

男「君のこと好きになってもいいですか?」
女はひとつ笑顔をこぼした
女「名前はなんて呼べばいい?」

そんなときはどちらからというわけでもなく、体のどこかを触れている。自然な状態だった。
とりあえず、好きかどうかということより、何て呼ぶかの方が今大事であり、確かにそうだなと。

著者:奈良あひる 写真:田中宏明

タイトルとURLをコピーしました