こんな街では、雨宿りと言えばラブホしかない。
いかにも雨が振りそうな日に、バイクに二人乗りで出かけた。
雨が振りそうでも出かけたのは、バイク乗りの男がこの日をたのしみにしていたからだ。
雨が降っていない時点で中止は言いづらかった。
雨が降った。
夏だったからか、雨具はとくに用意していなかった。
雨に濡れたってそれほど寒くはない。
いやしかし、バイクで走るにはそういうわけにもいかない。
そんなわけで雨宿りをすることになった。
「雨宿りをする」という言葉を強調してラブホに入ったが、普通にしてしまった。
年下の男と。職場の。
雨が上がれば、ホテルを出て、またしばらく、バイクに乗る。
今裸で触れ合っている体に半分濡れたシャツを挟んで。
文/奈良あひる
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