事業用賃貸に関するビル管理上の疑問、トラブル対策、クレーム対応、ニュートラルな立ち位置でご紹介。田中宏明 1980年生まれ 東京都昭島市出身の週末の写真家・放送作家2023年 日本大学文理学部応用数学科卒業2007年夏より 週末は自由に生きたい会社員(不動産業)となる。宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士。
落とし物を預かってしまったらリスク
ビルのテナントが、ビル内に落ちていた物を親切に届けてくれるときがある。
これは明らかに、親切でやっているのですが、受け取ってしまったビル側は何もいいことはない。つまりリスクしかない。ありがた迷惑なのだ。
こんな話がある。
ある人が、落とし物として携帯電話を管理室へ届けた。
管理人は預かった。
しばらくして
その電話がなる。
男「携帯の落とし物はきていますか?」
管理人「あります」
男「これからとりにいきます」
戸が鳴る。
女「先程携帯の落とし物の件で電話をした○○の妻です」
管理人は携帯を渡した。
そしてしばらくたって、男が現れる。
男「先程電話した○○です」
管理人「先程奥さまにお渡ししましたが…」
男「は…、私は独身ですが」
男「あの携帯は仕事用の携帯電話で、これから大事な取引がある。どうしてくれるんだ」
管理人「…」
男「その女の名は?」
管理人「○○様の妻と…」
男「名前を聞いていないということですね、身分証明書も確認せずにわたしたということですね。これは大問題ですね」
そして、損害賠償を請求されることになった。
管理人の明らかな確認ミスによって。
やつらはグルだった
これは、古くから手口。はめられたのだ。
落とし物とはリスクしかない。
誰かが、落とし物を持ってきて、預かってしまった場合。
即行警察に持っていくことだ。
すぐやること。
それか預からないこと。
会社でそう決まってると説明すればいい。
昔は警察に届けるのも面倒だった
警察に預けるにしても、そこであれもこれも聞かれて、届けた者の住所や連絡先などいろいろ。時間も結構かかる。
親切で持っていったつもりが、そんなに手間ならば、持っていかないぜ!ぐらい面倒。
だった。
今はそういったこともあって、預けただけですぐ解放される。
ただひとつ聞かれることは、権利の放棄についてだ。
権利の放棄
警察官「あなたはここへ届けただけで、拾ったのは別の人ですか?」
僕「はい」
警察官「それでは、権利は拾った人になります。そのひとの権利放棄を確認してきてください」
めんどくせぇ!
ここでポイントなのは、拾った者が、所有者が見つかった場合の1割の権利をもつのだ。警察に届けた人ではないということだ。
なので、拾った物を受け取った場合は、その場で、権利放棄の意思確認が必要となる。
もし落とし物を届ける人がいたならば「権利放棄でなければこちらでは受け取れないので、警察へお届けください」と返すことになります。
大人の世界では、リスクしかないことはする意味はないですね。
受け付けないという仕事もあるんですね。
文/田中宏明