ホテルを出てもまだ外は明るかった。
ホテルの中で、加恵は男とラインを交換した。
そして男のインスタアカウントの入った名刺みたいなものをもらった。
写真はセレクトしてラインで送ってくれるとのことだった。
わたしは、加恵は数時間前までの自分とは違う人間になったようでもあった。とはいっても、数時間前から変わったことと言えば、経験人数が1増えたということぐらいではあるが。
それでも、何か新しい自分に出会えた気がもうすでにしていた。
男とは夕食を共にした。
加恵は一度自分がとっている宿に荷物をおき、それから数時間、ぐだぐだして、それからだった。
時間は男が指定した。
もうすっかり暗くなっていた。
川のそばのイタリア喫茶で会話を楽しんだ。
さっきセックスしたという話題はお互い一度も触れなかった。
わたしは、できればもう一度したっていいぐらいの気持ちではあったのだが。
それぐらい、心は今日一日のできごとにより弾んでいた。
わたしは恋をしているのだろうか。
そんなことを思いながら、フォークを口に運んでいたが、定義やジャンルというものは、こ論文でも書くわけじゃけじゃあるまいし、無意味だった。
それは、男の言葉をきいていれば自然にそう思えた。
それは、また、セックスとは関係ない、セックスとは結び付かないわだいであった。
男はおいいそうに料理をたべる。
その音の合間にきこえてくるう隣のテーブルの男女の会話もまたセックスとは結びつかないような響きだった。
つづく
作/奈良あひる
プチ官能小説と官能随筆の第1話はこちら
井の頭Pastoralにも連載してます。