田中屋のスポーツ新聞10/18「松任谷由実 ニューアルバムとAI 小説1」編集者/田中宏明

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深夜コラム「松任谷由実 ニューアルバム」

松任谷由実、40枚目のアルバム完成を記念し『爆音先行試聴会&トークライブ』開催 16年ぶりの試聴会登場で夫・松任谷正隆と制作秘話語る(オリコン) - Yahoo!ニュース
 松任谷由実が、11月18日にリリースする自身40枚目のオリジナルアルバム『Wormhole / Yumi AraI』の完成を記念し、『爆音先行試聴会&トークライブ』を開催した。イベントは17日、東

AI的な音楽について、人の感情・気持ちは動かせないと語る。
人の感情を動かせるのは、最終的に続いて関わっていると思います。

ここで、40枚もアルバムを出す人間であるということは、1枚目からひとの心を動かせる人物であると思います。

AIであろうとなんであろうと、40年続く文化は人の心を動かせるのだと思います。

僕はAIの力を今時点はすごいと思っています。

40年後どうなっているでしょうか。

ただですね、生身の人間がやっていることを僕は信じています。

田中屋のシティスナップ「湘南江の島の女」

撮影/田中宏明

新連載「女も3年目から」第1話 作/奈良あひる

湯気の立つ味噌汁の向こうで、彼は少し俯いていた。
 箸を持つ指が、いつもより神経質に震えている。

 その震えを見て、真紀は確信した。
 女の勘、というのは、時に残酷だ。問いただす前に、もう答えが見えてしまうのだから。

「ねえ、昨日の夜、どこにいたの?」

 彼は、しばらく黙っていた。味噌汁の湯気が細く揺れ、やがて消える。
 その消えるのを見届けてから、彼は息を吸い込むようにして言った。

「……悪かった。ほんの、出来心なんだ」

 言葉の後に、重たい沈黙が落ちた。
 窓の外では、洗濯物が風に揺れている。白いシャツの袖が、まるで誰かを呼んでいるみたいに。

 真紀は笑わなかった。怒ることもなかった。ただ、スプーンで味噌汁をひと口すくって、口に運んだ。
 味は、しょっぱくも薄くもなかった。ただ、何の味もしなかった。

「三年目の浮気ぐらい、多めに見てくれよ」
 彼は、気の抜けたような笑いを浮かべて言った。
 それが冗談なのか、本気なのか、判断のつかない声だった。

 真紀はその言葉を、まるで異国の言葉のように聞いた。
 自分の耳には届いているのに、心には届かない。

 ふたりで暮らし始めて三年。
 生活は穏やかで、刺激も少なく、まるで白湯のような日々だった。
けれど、彼の中では、何かが乾いていったのかもしれない。
 その乾きを、他の誰かの手で潤したのだと思うと、胸の奥がきゅっと縮んだ。

 怒りよりも先に、悲しみがあった。
 悲しみよりも先に、諦めが顔を出していた。

 真紀は、箸を置いた。
 その音が、妙に大きく響いた。
 まるで、「ここから何かが変わりますよ」と誰かが告げる合図のようだった。

「……そう。三年目ね」

 それだけ言って、席を立った。
 背中に彼の視線を感じたが、振り向かなかった。

 台所の窓から射し込む朝の光が、白い手の甲を照らす。
 その光の中で、真紀はゆっくりと考えた。
 許すことと、忘れることは、似ているようでまったく違う。

 この人をまだ好きでいられるのか。
 それとも、好きだった時間に幕を下ろすのか。

 答えはすぐには出なかった。
 ただ、ひとつだけ確かなのは、今までの「ふたり」はもういないということだった。

つづく

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