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夕刻日誌「田中屋式ダイエット法」
田中屋の夕刻コラム「ブレッドアンドバターのどっちか脂肪?!」
ビリーバンバンの兄…

湘南サウンドで売ってるのがビリーバンバンで、国立出身を売っているのがブレッド&バター
え、逆?!
田中屋のシティスナップ「吉祥寺の喫茶店の女」

撮影/田中宏明
連続小説「女の風景写真」第28話 作/奈良あひる
チェックインを済ませ、三人で並んで廊下を歩く。
絨毯は厚く、靴音は吸い込まれるように響かない。けれど、その静けさがかえって胸の鼓動を際立たせた。
夫は無言のまま前を歩き、手に鍵を握っている。その背中は固く、しかし迷いではなく、何かを決意したように見えた。
由紀子はその少し後ろを歩き、男は彼女の隣にゆっくりと歩調を合わせていた。
――この先にあるのは、もう戻れない夜。
由紀子は唇を噛み、視線を床に落とした。赤い模様のじゅうたんが波のように揺れて見える。
隣を歩く男の気配が、妙に近い。だが、その一方で夫の肩越しに見える鍵の銀色が、重たく光っていた。
やがて目的の部屋にたどり着く。
夫が立ち止まり、ゆっくりと振り返った。
「……いいな?」
由紀子は息をのみ、うなずくしかなかった。
男も短く頷く。
その三者の間に流れたのは、言葉よりも確かな承認だった。
夫がカードキーを差し込み、カチリと音が響く。
その小さな音に、由紀子の全身がびくりと震えた。
ドアノブに手をかけた夫は、しばし動かなかった。
その沈黙は、最後の猶予のようでもあり、合図を待つ間合いのようでもあった。
由紀子は、意を決して囁いた。
「……お願いします」
夫の手が静かに回され、扉が開いていった。
そこに広がる空間は、日常とはまるで異なる、未知の世界の入り口に見えた。
つづく
作者紹介
田中宏明 1980年生まれ 東京都昭島市出身の写真家・放送作家。
2003年 日本大学文理学部応用数学科 ぎりぎり卒業。下北沢・吉祥寺での売れないバンドマン生活&放送作家として日テレ・フジテレビ・テレビ朝日を出入りする。現在はピンでラジオと弾き語りでのパフォーマンスをおこなっている。
◆写真家:シティスナップとかるーい読物「井の頭Pastoral」撮影・編集
◆放送作家:ラジオドラマ「湘南サラリーマン女子」原作・脚本 オールデイズ直江津Radioで放送中!
出演ラジオ 第98回
田中屋のシティスナップ