田中屋の夕刻日誌「読書で一番大切なもの」
=田中屋スポーツ新聞=新聞を読めと言われた世代!?読むならスポーツ新聞だな。情熱といかがわしさのサンドウィッチ。ジャンクな話題をコーヒーで流し込め!学校でも職場でも使える話題をお届け

田中屋の夕刻日誌
最近は本がネットで買えるから便利なものだ。昔はよくブックオフへ行ったものだ。
ただ本屋にあって、ネット購入にはないものがある。
それは、偶然の出会いだ。
放送作家なんてやっていると偶然の出会いが大事なんて言って、探している本と、その隣の本棚を眺めるなんて向上心くさいも話もあった。
そんな話がしたいわけではなくて、本に出会うこと、本を読むことで大事なこと。
本に出会うことは次回にまわしまして、本を読むにあたった大事なことは、しおりに出会うことだ。
それもだ、喫茶店などで、気に入った本があったとして、それの続きを読む場合に、その本に挟むしおりさ。
そんなしおりを見つけることができれば、本のつづき喫茶店の続きを楽しむことができるのだ。
では何をしおりとして使えばいいのか。
さっき、買ったレシート。
これをはさんでいたら前回がいつなのか、何をしたあとなのかも思い出すことができる。
これは、他のひとがみてもおもしろいが、ごみにも見えてしまうおそれがある。
そんなときは、これだ、井の頭Pastoralだ。読み終わった巻を喫茶店の興味ある本のしおりにして挟んでかえるのだ。
次回そのしおりはあるのかもふくめて面白い。
井の頭Pastoralは写真家田中宏明撮影にイカしたカバーガールで飾られている。喫茶にもぴったりで、その本を手にした人もそのしおりをみつけてスペシャリティを感じるのだ。
さぁ、人生に踊り疲れたら、井の頭Pastoralを持って本を読もう!
それでは本日のしおり

「人生に行き詰った僕は、喫茶店で答えを見つけた」(赤澤智)のしおりに使用
田中屋のシティスナップ「クラシカルなスナックスタイルの下北沢の女」

撮影/田中宏明
連続小説「女の風景写真」第27話 作/奈良あひる
ロビーのテーブルに並んだ三人は、最初こそ硬い笑みを浮かべていたが、時が少しずつ空気をやわらげていった。
由紀子は、両手を膝の上でぎゅっと重ねながら、目の前の夫と男を交互に見つめる。
「こうして……三人で座ってるの、なんだか信じられない」
思わず口にすると、夫が小さく鼻で笑った。
「俺もだ。けど、君が書いた“物語”を読んでいるうちに、もう引き返せない気がしてな」
男がそこで言葉を添える。
「物語は、読むだけじゃなく続けなきゃいけないんです。今日はそのためにある」
夫はわずかに眉をひそめ、しかし反論はしなかった。
代わりにカップのコーヒーをひと口含み、熱さに顔をしかめる。
「……俺はまだ迷ってる。嫉妬もある。でも、それ以上に……興味もあるんだ」
その正直な吐露に、由紀子の胸がじんわりと熱を帯びた。
――この人は、受け入れようとしている。怖さよりも、好奇心を優先させようとしている。
「私も……怖い。でも、あなたが一緒にいてくれるなら」
由紀子は夫に目を向け、声を震わせながら続けた。
「私は、進めると思う」
夫の指先がテーブルの下でそっと動き、由紀子の手に触れた。
その瞬間、男が静かに言った。
「じゃあ、三人で歩きましょう。続きを、一緒に」
重い空気が、少しずつ溶けていくのを感じた。
まだぎこちない。けれど確かに、三人は同じ方向を見始めていた。
つづく
作者紹介
田中宏明 1980年生まれ 東京都昭島市出身の写真家・放送作家。
2003年 日本大学文理学部応用数学科 ぎりぎり卒業。下北沢・吉祥寺での売れないバンドマン生活&放送作家として日テレ・フジテレビ・テレビ朝日を出入りする。現在はピンでラジオと弾き語りでのパフォーマンスをおこなっている。
◆写真家:シティスナップとかるーい読物「井の頭Pastoral」撮影・編集
◆放送作家:ラジオドラマ「湘南サラリーマン女子」原作・脚本 オールデイズ直江津Radioで放送中!
出演ラジオ 第98回
田中屋のシティスナップ