今までなかった不動産管理の参考書~トラブルから学ぼう!
災害による設備不具合と賃貸人の免責について
ここのところ雨が強いですね。学生時代の時は台風なんてのは授業休みにならなかななんて期待の星でしたが今では恐怖の存在です。
それは管理ビルでの雨漏りです。普段の雨では漏水しなくても、台風となると漏水するということはよくあることです。
今日は台風で漏水が起きた時のあるある…
早く言いたいよ
どこが誰の責任範囲か
テナント「雨漏りしている。何とかしてくれ」
不動産の賃貸借契約において
建物や付属設備の故障・不具合が生じた場合、賃貸人は修繕義務を負うのが原則です。
※民法606条1項が「賃貸人は賃借物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」
しかし、すべての不具合について無条件に賃貸人が責任を負うわけではありません。特に、台風・地震・豪雨といった不可抗力的な災害に起因する損害については、契約上「免責」とする取扱いとなり、法的にも根拠をもっています。
民法
民法415条の債務不履行責任の枠組みをみてみいると、同条3項(2020年改正民法)により、賃貸人に「帰責事由」がなければ損害賠償責任を負わないとされています。
つまり、賃貸人の故意・過失なく、外部からの不可抗力的な災害によって設備が損壊した場合には、賃貸人は責任を負うものではありません。これが災害時の免責の基本的な法的根拠です。
”誰が悪いのか”という点
について考えると、今回の漏水で、だれが悪いかと言えば、悪いのは台風です。
それを賃貸人が、台風に代わって責任持つ必要はないということです。
テナント「漏水の影響で設備に不具合が出た」
賃貸人「保険会社に相談してみてはいかがでしょうか」
テナント「漏水の影響で営業できなかったのでその分補償してくれ」
賃貸人「契約書読んでますか?災害は免責です」
しかしこの場合、修繕義務と損害賠償義務は区別して考えねばならないですね。災害により損害が生じても、それが賃貸人の過失によらない以上、損害賠償義務までは発生せず、結果的に「免責」となります。
賃貸人は、台風での漏水は、賃借人への損害補償なんてものはありませんが、設備を改修する手配は必要です。
判例もこの点を支持している。たとえば、台風で屋根が飛ばされ、雨漏りによりテナントが営業できなくなった事案では、賃貸人の通常の管理・点検義務違反が認められなければ、不可抗力による損害として賃貸人の責任は否定された(最判昭和50年2月25日)。
このように、災害は賃貸人の予見可能性を超える事象と評価され、修繕義務を超えた賠償責任までは問われません。
実務上、賃貸借契約書には「天災地変、不可抗力による損害については賃貸人は責任を負わない」といった免責条項が盛り込まれています。これは上記民法の規律を明文化したものです。
民法の範囲ですので、契約書に書かれていなくても、この内容は有効になります。
台風とは、どこからが台風なのか
これは気象庁の報道などを参考とします。
最近は、気象庁の報道の参考度合いが大きいですよね。
台風予報があったり、熱中症警戒アラートなど、それを大きく考慮する流れになっています。
台風予報が出ると管理会社としの独特のソワソワ感がなんとも言えないものです。
作者紹介
田中宏明 1980年生まれ 東京都昭島市出身
2003年 日本大学文理学部応用数学科 卒業。
宅地建物取引主任氏、賃貸不動産経営管理士、FP2級
ブログにて「不動産管理あるあるエッセイ」連載

出演出演ラジオ 第98回
田中屋のシティスナップ