=夕刻日誌=日常はエッセイにするとちょっとメルヘン。卒論のネタとスナックのママの話題のネツマミとは似たようなものだ。デートにも使える話題のネタを紹介。満員電車の脳内暇つぶしにも。
娘の虫かご
虫捕りをしている親子の姿をたびたび見かける。虫いるのかなぁ、父さんのメンツにかけて捕れることを願う、なんて思いながら。
うちの子も虫捕りをしたいと言い出した。おお、来たか。虫はいるのか。虫なんていないよなんて言えないので、草むら目掛けて歩いてみた。いつの間にか虫捕り網と虫かごを持っていた。形から入るねぇ、形大事よ。
虫なんていないと思っていたが、特殊なものを追わなければいるものだ。その虫かごの一番はじめの住人となったのは、ダンゴムシだった。
うちの庭の石をひっくり返せばそこにいる。そのぐらいのものでも自分で捕って虫かごにいれると達成感があり嬉しいもので、大はしゃぎしていた。
いた場所と同じように土を入れて石なんか入れて、住む環境を整える。そのあと、何を食べるか調べる。葉っぱ、枯れ葉、微生物、死骸など食べているらしい。
そして、しばらく観察して、飽きたのか、次のものを捕りたくなって逃がすというのがひとセットだ。
つづいて、バッタ、サワガニ、何かの幼虫、蝶、ミドリムシなど、住人は変わっていった。
捕まえたときと同じような環境を作るというのは、部屋の模様替えと言うか、カスタムというか、季節と言うか、移り変わりというものがたのしい。
そして、俺変わるときに、まっさらなただの透明なプラスチック。何ていうか、空き家のような感じ。次はどんな人がすむのかと、住人を待っているようだ。そうだ、僕がいままで住んでいた、6帖ひと間のアパートのようだ。
アパートの大家さんというのもそんなふうにうつりかわりを見届けていって、それは人間であり、今僕がこうして、その虫かごの住人を思い出すように、今までの入居者のことを思い出す瞬間があるように思える。ぼくの住んでいたアパートはもうすべてない。
下北沢駅9分 2階の風呂なしアパート
僕の前にはどんな人達が住んでいたのか。
ちょっと大げさに言うならば会ってみたいぐらいだ。
作者紹介
田中宏明 1980年生まれ 東京都昭島市出身の週末の写真家・放送作家。
2003年 日本大学文理学部応用数学科 ぎりぎり卒業。下北沢・吉祥寺での売れないバンドマン生活を経て、会社員(番組制作→不動産業)となる。
◆写真家:シティスナップとかるーい読物「井の頭Pastoral」撮影・編集
◆放送作家:ラジオドラマ「湘南サラリーマン女子」原作・脚本 オールデイズ直江津Radioで放送
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