ホテルを出ると日常である。
ただ普段は通り過ぎていたラブホの前から出てきたと言うだけ。
知らなかったことが少し明らかになっただけ。
三奈は、男はなぜ胸に出すのが好きなのか聞いたつもりだが、その答えが返ってこなくて、声が出ていなかったのかもしれないと思った。それはそれでよかった。
この時間が気持ちよかったことには変わらないから。
そして、どうひっくり返っても充実していなかったとは言えないから。
そんなことに憧れていた時間が長かったから。そして今そういうことをしていて、それがやは日常に潤いを与えていると実感するから。
三奈は次のきっかけを待っている。
きっかけは作るより乗ることが大事といつからか思うようになった。その理由はわかっていたがいまは思い出せない。理屈的なことはいらなくなったということなのかもしれない。
三奈は自分の部屋で眠りにつく頃、男からメールが来た。
「実は結婚はしていないんだ。そういったらどう思うかなと思って。その方が燃えない?」
燃えたわ…
三奈はそうつぶやいて目を閉じた
おしまい
作者/奈良あひる
1990年生まれ