田中屋スポーツ新聞 10/24「保険の手続き 小説 天井模様スタート」編集者/田中宏明

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田中屋の体調不良記録

保健の手続きをする

今はスマホから入力して、診療明細・領収証を写真撮って添付するとい作業。
前回はレトロに書類を請求して書いて送った。それはそれでわかりやすいんですよね。送ったものも残るし。

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展示のお知らせ

2025年10月25日 汐入BLOOMMIN 13時から17時頃まで

今回は井の頭Pastoral 全200巻ぐらいの中から、横須賀が表紙の巻を持っていきます。
フリーペーパーですのでぜひ持って行ってください。

※ネット販売の場合は有料になります。

田中屋のシティスナップ「BerryBerryBreakfast in高田」

撮影/まりよん

連続小説「天井模様」作/奈良あひる

健康診断なんて、年に一度の形式だと思っていた。会社でまとめて受けるし、特に異常もない。朝、駅の階段を上りながら、ああ眠い、とため息をついたとき、私はまだ、今日の出来事を想像もしていなかった。

 採血の順番がまわってきたとき、少しだけ緊張した。看護師が袖をまくりながら「血管、細いですね」とつぶやいた。そう言われると、急に自分の身体が他人のものみたいに感じる。
 針が刺さる瞬間、視界の端が少しだけ揺れた。
 そのあとが、途切れている。

 気がつくと、私は床に倒れていた。冷たい床。誰かが「大丈夫ですか」と呼びかけている。
 何人かの白衣が見えた。私はその真ん中で、体を起こそうとしてやめた。めまいがまだ残っていた。
 腕を動かすと、肘のあたりがズキンと痛んだ。あとで聞くと、倒れたときに椅子の脚でぶつけたらしい。

 そのまま別室に運ばれ、簡易ベッドに寝かされた。
 白い天井に、うっすらと茶色いしみがあった。最初は気にも留めなかったけれど、しばらく見ているうちに、その形が人の顔のようにも見えてきた。
 眉をひそめて笑っているような顔。
 まるで、私の失態を見下ろしているみたいだった。

 ――なにをそんなに急いでいたのだろう。

 朝、会社に行く前にメールをひとつ返信して、洗濯機を回して、ゴミを出して、マスカラをつける手を震わせながら時計を見て。
 どれもたいしたことじゃない。けれど、全部を落とさずに抱えようとするたびに、どこかで息が詰まっていたのかもしれない。

 看護師が冷たいタオルを額にあててくれた。
 「貧血ですね。しばらく横になっててください」
 「すみません」
 そう答えながら、自分でもおかしくなった。謝ることなんてないのに、謝ってしまう。

 小一時間ほどして、ようやく起き上がった。頭の重さが少し残っている。
 診察室の外に出ると、昼の光が窓から差しこんでいた。眩しかった。
 腕には小さな絆創膏。肘にはうすい赤紫のあざ。
 鏡を見ると、髪が少し乱れていたけれど、顔はいつもと変わらない。

 それでも、心の奥で何かがすっと静まっていた。
 あの天井のしみを思い出す。
 誰かが見ている。笑っている。
 それがなぜか、少しありがたいような気がした。

 帰り道、コンビニのガラスに映った自分の姿を見て、思わず立ち止まった。
 息を吸いこむ。
 空が高い。電線の向こうに、薄く白い雲。
 生きている、と思った。
 それだけのことが、胸の奥でゆっくりと広がっていった。

作者紹介 

田中宏明 1980年生まれ 東京都昭島市出身の写真家・放送作家。  

2003年 日本大学文理学部応用数学科 ぎりぎり卒業。下北沢・吉祥寺での売れないバンドマン生活&放送作家として日テレ・フジテレビ・テレビ朝日を出入りする。現在はピンでラジオと弾き語りでのパフォーマンスをおこなっている。  
◆写真家:シティスナップとかるーい読物「井の頭Pastoral」撮影・編集  
◆放送作家:ラジオドラマ「湘南サラリーマン女子」原作・脚本 オールデイズ直江津Radioで放送中! 

出演ラジオ 第100回 

第100回!「BerryBerryBreakfastのオールデイズ直江津Radio」ヨーグルト田中とDJシューカイ

田中屋のシティスナップ 

田中屋のシティスナップ 旅情俳句前夜「雨に濡れる高田馬場の女」撮影/田中宏明 #サーファー #shorts #zine 

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