=賃貸物件退去後の残置物所有権=
店舗が退去するときというのは、どちらかというと、経営が立ち行かなくなっている場合が多い。
おのずと賃借人の機嫌はわるく、冷静に判断もできず、話も伝わりにくくなっているものであります。
そして退去時ややもめる。
退去はしたものの、いくつか物を残していった。
こういう事態はたびたびあります。
そこに所有権は存在するのか
所有権は存在してしまう
物に関する意思表示が何もない場合、所有権は存在します。
これは、あとから賃借人が「忘れ物をしちゃった」とか言って取りにきて、管理会社「もう捨てちゃいましたよ」となると、他人の物を勝手に捨てたということになってしまいます。部屋の賃貸借が終わったこととは別件のような話になってしまうのです。
当然、必要なものは持っていくはずなので、なぜそうなるかといったら、ただの嫌がらせです。金の無心です。
なので、物はなんでもいいのです。100円ショップのハンガーでも。
「そのハンガーは、松田優作さんが来たときにコートをかけたハンガーだ、どうしてくれる!」などと言ってきます。
捨ててしまったものはしょうがない。解約料(償却費)を返せなどといってきたりします。はやり金の無心です。
こうならないための対策を考えます。
所有権を消すために
解約の意思表示は、文書で行うことに、契約書ではなっています。
まず解約届けの雛形を賃貸人で作ることです。
その内容の中で、解約日に加え、明け渡し日を明記する。
明け渡しとは、鍵の返却・原状回復・私物の処分など、退去に必要な賃借人の義務すべてが含まれます。
さらに、明確化させるために、「解約日以降、賃借人私物が残っている場合、所有権を放棄する」という内容を入れておきます。
この解約届け(解約通知書)は、賃借人が印鑑を実印を押して、賃貸人に提出するのもになりますので、所有権は賃借人に意思になります。よって、解約後(明け渡し後)の所有権は残りません。本人が本人の意思で、意思表明をしているのですから。
残置物はゴミとして、乙の費用で片付けることができます。
契約書に、残置物は賃貸人(甲)が、賃借人(乙)の費用負担で処分することができる旨明記されています。
保証金(敷金)精算の際に、差し引いて返せばいいだけになります。
所有権解は約通知書で
所有権放棄まで解約通知書のなかで文書をとるのは大袈裟だとか、思われることもあるかもしれません。
しかし中には、退去の理由が体調不良という方もいます。
体調不良なので片付けができないという理由で、貴重品以外、部屋の中の物の処分を依頼されることもあります。そういう人のためにも先にその内容も入れておいた方がいいのです。
あとから口で言われても困るので。
大人の言った言わないはなかなか醜いので、そうならないようにと段取りするのが管理会社です。
解約通知書をもらうときに、「明け渡し・所有権放棄」の文言を入れておきましょう。
本当に大変なのは、何の意思表示もなく、プイと連絡がとれなくなってしまう夜逃ですね。
そんなときは…
つづく
文・写真/田中Mint
1980年生まれ 東京都昭島市出身の週末の写真家・放送作家。
2003年 日本大学文理学部応用数学科 ぎりぎり卒業。下北沢・吉祥寺での売れないバンドマン生活を経て、会社員(番組制作→不動産業)となる。
◆写真家:シティスナップとかるーい読物「井の頭Pastoral」撮影・編集
◆放送作家:ラジオドラマ「湘南サラリーマン女子」原作・脚本 オールデイズ直江津Radioで放送