第1話
真司は会社に向かって電車に乗っているところ、久しぶりの女からメールが届いた。
「久しぶりに有楽町に来た。この町に来ると真司君を思い出すよ。懐かしい」
写真が数枚送られてきた。
その女の名はK子。昔下北沢の地下のジャズ喫茶で働いている頃出逢ったのだ。下北沢とは縁のないような町有楽町。ふたりででかけたときもあった。
男ができたとかなんとかで、東北地方へ移り住んでいって交流は途絶えていた。
真司「今何してるの?」
K子「仕事できてる」
真司「いつ帰るの?」
K子「今日。昨日来て今日帰る。弾丸でした」
真司「そうか、紅鹿舎寄って行ってよ」
K子「それなんだっけ?」
真司「喫茶店だよ、有楽町の。Kちゃんといえば喫茶店でしょ」
K子「そうだった、わたし喫茶店好きだった。自由時間があんまりなくて、このあと仕事だから、行けたら行く」
そうか、もともと時間なかったのか。真司は、このちょっと古いトレンディドラマのような、「ちょっとそばまで来たから電話してみた」なんていうベタ展開を思い出して、そんなこともあるのかぁと浸っていたのだ。
真司「俺も行きたかったな」
K子「次いつかわからないけど、そのときは声かけるわ」
これは次はないパターンだな。
まぁ、そんなドラマみたいなことは起きないんだな。起きないから人はドラマに憧れて観るんだな。
真司「たのむぜ、べいびー」
適当に返した。
こんな時、東京ラブストーリのカンチならどうするか、101回目のプロポーズの武田鉄矢ならどうするか。
各駅停車の窓の外を眺めながら想像した。
各駅停車は空いていて、座れるのでいい。
つづく
著者:奈良あひる
1990年生まれ 渋谷のサラリーマン
趣味:短篇小説を書くこと サーフィンやってみたい
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