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田中屋の読書感想文「人生に行き詰まった僕は、喫茶店で答えを見つけた/赤澤智(白楽珈琲文明)」
白楽で最も入りづらい喫茶店である。
その理由は二つ。
・有名人の来客の写真を店頭にベタベタ貼ってあるから
・混んでいるから
それでも、場所がいい。白楽の闇市の中にあるのだ。
細い道を通りたがる僕は何度もその前を通る。
この本を読むと、モテるために、モテないことをする大学時代の男のことを思い出した。
田中宏明
田中屋のシティスナップ「トランクを開ける新宿御苑の女」

撮影/田中宏明
連載小説「女の風景写真」第30話 作/奈良あひる

テーブルに置かれたグラスの水は、誰も手を伸ばさぬまま少しずつ曇っていった。
その沈黙に耐えきれず、由紀子が小さく息を吸う。
「……あの」
声を出しただけで、二人の視線が一斉に自分に集まる。胸の奥がきゅっと縮む。
「少しずつで、いいんですよね……?」
夫は短く頷いた。
男はその言葉に微笑み、そっと身を乗り出す。
「ええ。少しずつでいい」
そう言って、男の指先がテーブルの上で由紀子の手に触れた。
ほんの一瞬の接触。けれど、それだけで身体の奥に熱が走る。
夫の視線を感じ、由紀子は息を呑んだ。
夫は何も言わない。ただその目に、怒りでも戸惑いでもなく、燃えるような緊張が宿っている。
「……大丈夫か?」
夫の低い声に、由紀子はこくりと頷く。
「うん……」
男の手はまだ軽く添えられたまま。由紀子の指先は無意識に反応し、わずかに絡む。
その仕草を夫が見ている。視線が鋭く、けれど離れない。
由紀子の心臓は今にも飛び出しそうだった。
――これは夢じゃない。
頭のどこかでそう確かめながら、三人の呼吸は少しずつ重なり始めていた。
つづく
作者紹介
田中宏明 1980年生まれ 東京都昭島市出身の写真家・放送作家。
2003年 日本大学文理学部応用数学科 ぎりぎり卒業。下北沢・吉祥寺での売れないバンドマン生活&放送作家として日テレ・フジテレビ・テレビ朝日を出入りする。現在はピンでラジオと弾き語りでのパフォーマンスをおこなっている。
◆写真家:シティスナップとかるーい読物「井の頭Pastoral」撮影・編集
◆放送作家:ラジオドラマ「湘南サラリーマン女子」原作・脚本 オールデイズ直江津Radioで放送中!
出演ラジオ 第99回
田中屋のシティスナップ


