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久しぶりにスタジオに入る「相模大野グルーブ」
相模大野バンドリハーサルスタジオを探したらここしかなかったと言う。頓挫していたユニット計画が動く。
相模大野駅中に行列があった。僕はアリよさらば(矢沢永吉)なので並ぶことには興味ないと思いながらも、何に並んでいるのかと思えばパン屋だった。パンの力ってすごいんだな。今やロックよりも人の心をつかんでいるのかもしれないな。

Gibson SGの女

高円寺のハコでタイバンだった。
90年代バンドブームの時代からコードを知らずにギターを弾き続けている謎の女である。
アンジーで作戦会議しようとしたら、ちょうどラストオーダー時刻を過ぎていた。

バンド名は宿題となる。
12月21日高円寺4thフロアでライブ予定。
IKEAの照明(MELODI)が説明書がユニークすぎる!
田中屋のシティスナップ「吉祥寺の女」

吉祥寺スナップ 撮影/田中宏明
小説「バンド名悩み物語」作/奈良あひる

夜のファミレスというのは、不思議な場所だ。昼間より静かで、居心地がいい。カップルも家族連れも帰ったあと、残るのは一人客か、仕事を持ち帰ったような顔の人ばかり。
わたしはコーヒーを二杯めにして、窓の外の国道を眺めていた。車のライトが途切れるたび、店内の蛍光灯がいっそう白く感じられる。
テーブルの上にはノート。そこには、いくつものバンド名の候補が書いてあった。
「トースト&バター」「二番線ホーム」「雨の手前」「ソーダの泡」……どれも悪くはないけれど、しっくりこない。
新しく始めるバンドといっても、メンバーは会社の同僚三人。昼間はエクセルを開いて書類を整え、夜はギターやベースを抱えて練習する。
ライブハウスに立つわけでもない。けれど、わたしはどこか本気だった。何かをやり直すつもりで始めたからだ。
「まだ決まらないの?」と、向かいに座る男が言った。
彼はキーボード担当。職場では隣の席だが、こうして夜中に会うと、少し他人のように見える。
「うん、言葉がどれも古く感じて。新しいのに、懐かしいようなのがいいの」
「そんな都合のいい名前、あるかな」
「あると思う」
彼は笑って、ミルクをスプーンでかき混ぜた。音がやけに大きく響いた。
その瞬間、厨房の方からチャイムが鳴り、フライパンの焦げる匂いがした。時計を見ると、もう一時を回っていた。
「君が最初にやりたいって言ったとき、意外だったよ」
「なんで?」
「音楽、そんなに好きなタイプじゃないと思ってた」
「好きっていうより、言い訳が欲しかったんだと思う」
彼は少しだけ首をかしげた。
「何の?」
「夜中に、誰かと同じ場所にいていい理由」
言ってしまってから、我ながら少し恥ずかしくなった。けれど、彼は何も言わず、ただカップを口に運んだ。
ノートをめくると、最後のページに、以前誰かがメモしたらしい言葉が残っていた。
《午後の余韻》
ボールペンの跡が少し深くて、手でなぞると凹みが伝わった。
「これ、どう思う?」
「悪くない。なんか、君っぽい」
「そう?」
「いつも少し、日が暮れたあとみたいだから」
わたしは笑って、コーヒーを飲み干した。苦いけれど、口の奥が温かかった。
店の外に出ると、冷たい風が首筋をなでた。街灯の光が、歩道の白線をゆっくり照らしている。
「午後の余韻」——いいかもしれない。
やり直すには、ちょうどいい名前のような気がした。
彼が自転車にまたがりながら言った。
「じゃあ、バンド名決定だな。最初の曲、君が書けよ」
「うん、たぶん夜のファミレスの歌になる」
そう言って手を振った。帰り道、口の中にはまだコーヒーの苦さが残っていた。
それが、新しい夜の始まりの味のように思えた。
作者紹介
田中宏明 1980年生まれ 東京都昭島市出身の写真家・放送作家。
2003年 日本大学文理学部応用数学科 ぎりぎり卒業。下北沢・吉祥寺での売れないバンドマン生活&放送作家として日テレ・フジテレビ・テレビ朝日を出入りする。現在はピンでラジオと弾き語りでのパフォーマンスをおこなっている。
◆写真家:シティスナップとかるーい読物「井の頭Pastoral」撮影・編集
◆放送作家:ラジオドラマ「湘南サラリーマン女子」原作・脚本 オールデイズ直江津Radioで放送中!
出演ラジオ 第100回
田中屋のシティスナップ



