田中屋スポーツ新聞10/15(火)「台風前の吉祥寺のスーパー」編集者/田中宏明

シティスナップ
シティスナップ すーじーぐぁー 夕刻コラム(社説盤) 外食記録と日記

=田中屋スポーツ新聞=新聞を読めと言われた世代!?読むならスポーツ新聞だな。情熱といかがわしさのサンドウィッチ。ジャンクな話題をコーヒーで流し込め!学校でも職場でも使える話題をお届け 

喫茶店についての走り書き

田中屋の時事俳句「今どきの台風前の細道」

俳句

台風前 並べ 買い物 食料品

解説

台風も進化しているので、こらもまた時代なのである。
ちなみに、蛇は進化して災害になったという。

田中屋のシティスナップ「ザ・オーバードーズ」

撮影/田中宏明

連続小説「女の風景写真」第48話 作/奈良あひる

 トーストの焦げる匂いが、静かな台所に満ちていた。
 由紀子が出ていったあと、夫はその匂いを嗅ぎながら、しばらく立ち尽くしていた。
 パンは黒くなりかけていて、慌ててトースターのスイッチを切る。
 そんな小さな失敗に、自分が少し動揺していることを悟る。

 テーブルの上には、封筒が置かれていた。
 白く、何の飾りもない。
 けれど、その存在が、部屋の空気を少し変えていた。

 夫は、すぐには開けなかった。
 ただ、湯気の立つコーヒーを見つめながら、ゆっくりと時間をかけた。
 その間に、時計の針の音が、妙に大きく響いていた。

 手紙を開くと、文字はいつもの由紀子の筆跡だった。
 丸みがあって、少しだけ急いだような癖がある。
 「ありがとう」と「ごめんなさい」が、並んでいた。
 そしてそのあいだに、少しだけ長い沈黙のような余白があった。

 彼は読み終えてからも、しばらく動けなかった。
 怒りでも、悲しみでもない。
 ただ、胸の奥にぽつんと穴が空いたようだった。

 けれど、不思議なことに、その穴の底には、静かな温もりが残っていた。
 由紀子がここにいた時間の気配。
 コーヒーの香り、椅子の背にかけられたカーディガン。
 それらが、彼の呼吸の中にまだ確かにあった。

 窓の外では、通勤の人々が歩きはじめている。
 その流れを眺めながら、夫は思った。
 「人は、誰かを愛したまま、別の朝を迎えることができるのだろうか」と。

 答えはわからなかった。
 けれど、由紀子の残した手紙の最後の一文――
 「どうか、あなたの時間を生きてください」
 その言葉が、少しだけ彼の肩の力を抜かせた。

 夫は冷めかけたコーヒーを一口飲んだ。
 苦みの中に、かすかな甘さを感じた。
 それが、どこか救いのようにも思えた。

つづく

作者紹介 

田中宏明 1980年生まれ 東京都昭島市出身の写真家・放送作家。  

2003年 日本大学文理学部応用数学科 ぎりぎり卒業。下北沢・吉祥寺での売れないバンドマン生活&放送作家として日テレ・フジテレビ・テレビ朝日を出入りする。現在はピンでラジオと弾き語りでのパフォーマンスをおこなっている。  
◆写真家:シティスナップとかるーい読物「井の頭Pastoral」撮影・編集  
◆放送作家:ラジオドラマ「湘南サラリーマン女子」原作・脚本 オールデイズ直江津Radioで放送中! 

出演ラジオ 第99回 

第99回!「BerryBerryBreakfastのオールデイズ直江津Radio」ヨーグルト田中とDJシューカイ

田中屋のシティスナップ 

田中屋のシティスナップ 旅情俳句前夜「雨に濡れる高田馬場の女」撮影/田中宏明 #サーファー #shorts #zine 

タイトルとURLをコピーしました