〇グランドキャバレー(夜)
ボーイに案内され席に着く男
ホステスがテーブルにつく
女「こんばんは、待ちました?アリサです」
男「田中です。全然、待ってないよ。大繁盛で気持ちいね」
女「おかげさまで。乾杯しましょ、水割りでいいかしら」
男「俺みたいなね、金ないサラリーマン組はこういうとこなかなか来れないから 何話していいか、、わかんなくってさ」
女「別に話しなくたっていいんですよ」
男「うん、まぁそうだけども、最近笑ったことって何ですか?」
女「最近笑ったこと、、ね。ねぇ田中さん、どこ出身?とか、昼間は何の仕事してるの?とか、なんでこの仕事してるの?とかあるじゃない?そういうの聞かないの?」
男「そりゃ、もう何百回も聞かれて飽きちゃってるでしょ」
女「何千回もね」
男「それにさ、聞いたところで本当のことなのかってのは全く別の話でしょ。まぁ真実が欲しいわけじゃないけどさ」
女「なによそれ」
男「アリサって名前だって、本当の名前じゃないんだろ」
女「ええ、そうよ」
男「今僕の前に君がいることでさえ、嘘かもしれないんだよね」
女「いいえ、それは本当よ。ここにあたしがいることは本当よ」
曲「わけありキャバレー」
作者紹介
田中宏明 1980年生まれ 東京都昭島市出身の週末の写真家・放送作家。
2003年 日本大学文理学部応用数学科 ぎりぎり卒業。下北沢・吉祥寺での売れないバンドマン生活を経て、会社員(番組制作→不動産業)となる。
◆写真家:シティスナップとかるーい読物「井の頭Pastoral」撮影・編集
◆放送作家:ラジオドラマ「湘南サラリーマン女子」原作・脚本 オールデイズ直江津Radioで放送中!
出演ラジオ 第95回
田中屋のシティスナップ
田中屋のロード俳句
田中屋のロード俳句のテーマ「それって感情の環状ってことよね」
井の頭Pastoral