=ロード俳句(田中屋式短歌57585)= 松尾芭蕉に嫉妬して、バイクで旅して俳句するロード随筆シリーズ。俳句とはかけそばのようなもの。トッピングして短歌にすることもできます。
俳句前
国道246号を小田原方面へ走る。松田町のあたりで川沿いに逸れる。
野宿スポットを探す。バイクでうろうろしていると、車いすの人(80歳ぐらい)に話しかけられる。
俳句
野を走る 若きバイクと 夢の中
季語ぬき
野を走る:夏
トッピング短歌
・今日は良い日と 飲むトマト
・酸素を吸って タバコ吸う
解説
声をかけられるといつも何か注意されのかと思ってしまう。
男「日陰に入って休みなよ」
男は場所を少し後ろにずれて日陰のスペースを作ってくれた。
印刷会社を経営し、その会社も60年になるという。
車いすの下からパックのトマトジュースを出して、ひとつくれた。そして、男ももうひとつトマトジュースを飲み始めた。
男「昔はだいぶバイクに乗ったねぇ。今でも乗るんだよ、夢の中で。今でもバイクに乗る夢を見るんだ」
男は煙草を吸っている。鼻には酸素を送る管をつけている。
男「煙草を吸うときはこれ外すんだよ、一気に酸素が送られてきたら、煙草が爆発するかもしれないからね(笑)」
煙草の吸いすぎで肺がおかしくなったらしい。しかし煙草はやめない。医者からは絶対吸ってはいけないと止められている。
男「もうこの年(93歳)になると死ぬのも怖くなくなるね」
ずっと笑顔だった。バイクの話ができて楽しいと。
男「今日はいい日だ」
はじめて聞いた言葉だった。
会社は、息子さんが継ぎ、バイクを乗り回すことも息子さんが引き継いでいるらしい。
僕は、教えてもらった、野宿スポットへ向けて走り出した。

作者紹介
田中宏明 1980年生まれ 東京都昭島市出身の週末の写真家・放送作家。
2003年 日本大学文理学部応用数学科 ぎりぎり卒業。下北沢・吉祥寺での売れないバンドマン生活を経て、会社員(番組制作→不動産業)となる。
◆写真家:シティスナップとかるーい読物「井の頭Pastoral」撮影・編集
◆放送作家:ラジオドラマ「湘南サラリーマン女子」原作・脚本 オールデイズ直江津Radioで放送中!
出演ラジオ 第90回
田中屋のロード俳句
田中屋のロード俳句のテーマ「それって感情の環状ってことよね」
わけありの女