連続プチロマン小説「女が電話に出ない時」第3話

短篇小説
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自然を求めたふたり

着いたのは神田川の川沿いのベンチ。
人気もなく、ゆっくり川は流れ、ゆっくり流れ、緑が揺れている。全くの冷静を装っていたが、ファミレスにいたときから気になって気になって…。顔をこちらへ向かせ、唇を重ねた。この瞬間はかけみたいなもの。キスをしなければ胸は触れないだろうと。
抵抗する様子もなく、それはごく自然な流れであった。あたるかあたらないかのタッチで2,3回。目を開けた時、愛子はまだ目を閉じていた。それを見た瞬間熱いキスへと変わっていった。先に舌を入れてきたのは愛子の方で、それを愛しく想う気持ちが燃える。
こういうふうになるときは、どちらも無理をすることなくそうなる。ずっと愛子のどかかに触れていた手はお腹を通過し、カーディガンとシャツの間へ入っていった。抵抗しない。上から3番目のボタンだけはずし、ゆっくりと中へ入っていく、片手でブラの上から両胸を確認し、その手は一度鎖骨まで登りブラの中へと降りていく。「やわらかい」それは心の叫びだ。柔らかいとは、はじめてその人の胸を揉んだときの感触の事を言うのかもしれない。


愛子「…かわいそう」
それがどういう意味なのか考える間もなく、愛子は「ホテル行きますか?」と笑った。
今来た道を歩く、明らかに来る時より速く。一番はじめに目に入ったホテルに入る勢いだ。何も喋らないようにしていた。何かを喋れば夢から現実に近づいてしまう気がするから。ここにしようか?なんて聞かない。新大久保のレトロとも呼べる、訳ありとも見える、地味なホテルに入り、手渡されたキーの部屋に入るだけだった。ドアが閉まるか閉まらないかのタイミングで始まった。ほんの5分10分キスしなかっただけで、その気持ちは…。壁を背にした愛子の胸を揉み、スカートをめくり上げ、ふともも、おしりと感触を味わい、熱くなる愛子の女の部分に触れようとしたときキスは止められた。

つづく

文/奈良あひる 写真/田中宏明

小田原
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