夕刻コラム「国分太一記者会見」
国分はどの人の何のことを言っているのかわ協議を求めるが、日テレ側はそれに応じない。
何も語らず、コンプライアンス違反ということを訴えて吊し上げるという恐ろしい事態。

僕は日テレを出入りしていたが、それなら僕も言いたいことがあるぐらいだ。
もし、この日テレの行動がダミーによるものだとしたらどうだろうか。
実際に何も起きていないが、二次被害が起きる可能性があるとして、いえないなんて言うのが使えれば、誰でも何回でも使えますね。
ちゃんちゃらおかしいです。
これはいじめですね。
もし社会的つるしあげをしたいとしたら、ちゃんと事態を明かさないとどうにもすすみません。
大人ならそれぐらいの覚悟はあるだろ。
それと、国分の所属事務所よ。もう少しタレントを守れないものか。独立したから駄目ってことかな。
田中屋のシティスナップ「湯河原の男 cafe sanpo」

湯河原スナップ 撮影/田中宏明
小説「湯河原慕情」作/奈良あひる

湯河原の駅前から坂をくだり、海のにおいが少し混じった風を胸いっぱいに吸うと、由利子はふっと肩の力が抜けた。夫も子どもも昼過ぎまで戻らない。たった半日の自由が、思いのほか心を軽くしていた。
路地に、小さなカフェがある。白木の扉に「午後の雨」という控えめな文字。覗き込むと、窓辺に若い男が本を開いたまま湯気の立つカップを抱えている。迷うほどの時間でもないのに、由利子はするりと扉を押した。
「いらっしゃいませ」
カウンターの向こうに立つ男性は三十代の半ばほどだろうか。黒いシャツがよく似合っている。由利子が席を選ぶ前に、「窓際があたたかいですよ」とすすめてきた。その声がやわらかくて、言われるままになってしまう。
「こちら、季節のブレンドです。少し酸味が強いですが、湿った日には飲みやすい」
すすめられたまま注文し、カップに口を近づけると、たしかに軽い酸味が舌に触れた。由利子は、知らない人間に好みを見透かされたような気がして、妙に落ち着かない。
「旅ですか」
カウンター越しに男が声をかける。夫と子どもが湯治に来ていること、今だけ一人なことを話すと、男は目を細めた。
「一人の時間って、贅沢ですよね」
その言い方に、何かを共有したような空気が流れた。窓の外で風が枝を揺らす。半分ほど残った珈琲を見つめていると、男が低い声で言った。
「よかったら、奥の席でゆっくりされますか。人の出入りも少ないので」
断る理由を探す前に、脚が先に立ってしまった。小さな衝立の向こう、薄あかりの席。置かれた花瓶に、白い桔梗が一輪。夫でも、友人でもない目が、こちらを静かに見つめている。
由利子は、熱くもないのに指先が湿るのを感じた。たまたま入った店で、たまたま通りかかっただけの人間に、どうしてこんなふうに心が揺れるのか。
「また、来てくださいますか」
男が言った。問いかけというより確信めいた声音だった。
由利子は、答えずに微笑んだ。カップの底に残った薄い珈琲の色が、どこか後ろめたい影のように見えた。だが、扉を閉める直前、一度だけ振り返ると、男はそこに立ち、軽く会釈した。
湯河原の空気が、さっきより穏やかに胸に刺さってくる。微かに痛むその感触を、由利子は嫌いではなかった。

