=田中屋スポーツ新聞=新聞を読めと言われた世代!?読むならスポーツ新聞だな。情熱といかがわしさのサンドウィッチ。ジャンクな話題をコーヒーで流し込め!学校でも職場でも使える話題をお届け

田中屋のHONDANA「謎のズッコケ海賊島」
冒険と言えば、やっぱり探検的なものでありたい。いくつになっても。
直江津に行く前に実家に寄って見つけた本。長い電車の中をこの本と過ごした。
小学生の頃読んでいた本。僕の読書力でも熱中できる。
そんな本がこの世に何冊あるだろうか。それに出逢えれば幸せだ。
夕刻コラム「中森明菜 ディナーショー」
ディナーショーって、少ないお客さんから高いお金をとるパターンのショービジネスという認識だった。
一線を過ぎたアーティストがやることというイメージ。
中森明菜は人前で歌う音楽からだいぶ離れてしまっていて、そっちのパターンに乗ってしまったのかもしれないが、このディナーショーというのは、昔ながらの芸能人のパターン出逢って、最近の文化というよりはクラシックというかレトロな手法だと思う。
それでも僕は、中森明菜は、郷ひろみみたいにテレビで新曲を歌ってほしいという願いを持っている。
田中屋のシティスナップ「平塚の画家の女」

撮影/田中宏明
連続小説「女の風景写真」第22話 作/奈良あひる
夜更け。夫はまた、居間のパソコンに向かっていた。
由紀子は寝室で身じろぎもせず、薄い襖越しに小さなキーの音を聴き取る。
――今夜は、あの逢瀬を書いた。
背中に触れた手の熱、耳に落とされた囁き、時刻や部屋の匂いまで細やかに綴った。
やがて、夫の呼吸が乱れるのが伝わってきた。椅子をわずかにきしませる音、深く喉で息を呑む気配。
由紀子の胸は早鐘を打つ。夫が読んでいる。自分が別の男に抱かれた記録を――。
寝室に戻ってきた夫は、何も言わずに布団へ潜り込んだ。
そのまま、強く由紀子を抱き寄せた。
「……お前」
それ以上の言葉はなかった。けれど熱を帯びた手つきと荒い吐息が、彼の心を雄弁に語っていた。
由紀子は応えた。互いの身体が熱に溺れる。
しかし、その最中にふと胸をかすめるものがあった。
――この人は、自分の文章で昂ぶっている。
そこにあるのは私自身ではなく、物語の私。別の男に求められた女としての私。
そして彼は、怒りと嫉妬と興奮をないまぜにしながら、それを燃料にして私を抱いている。
(可哀想……)
その言葉が、汗ばむ肌の奥でひそかに芽生えた。
夫は知らない。私が実際にどこまで踏み込んでしまったのか。
いや、知らないふりをしているのかもしれない。
けれど、どちらにせよ彼はこの「物語」に縋り、熱を繰り返している。
――私は、夫を裏切りながら、夫の欲望の種になっている。
哀しさと昂ぶりがないまぜになり、由紀子は夫の肩に爪を立てた。
夫はそれを合図のように、さらに深く彼女を求めた。
翌朝、夫は無言で新聞を広げていた。
だが由紀子の目には、その横顔がひどく脆く、そして愛おしく映った。
彼がどれほど強がっても、真実を知ることはできない。知らぬまま、物語を追い、興奮し、そして求め続ける。
由紀子は味噌汁をすすりながら、胸の奥で苦い熱を抱き続けていた。
つづく