=田中屋式短歌= 松尾芭蕉に嫉妬して、バイクで旅して俳句するロードエッセイシリーズ。30文字ぐらいのメルヘン小説へようこそ
俳句
何故なんだ 女が蕎麦屋で 立っている
解説
小さな悲劇が起きた。ある丼屋で券売機の前に立ったら、いつものを食べようとしたら、それメニューはなくなっており、すべての商品が一気に値上がりしていたのである。
いつものを探す指は画面をウロウロして、注文をやめるに行き着いた。この店ももう食べるものはなくなった。
どんどん行けるお店がなくなっていく、このままなくなり続けたらどうなるのだろうか。
そこで、そのとなりの立ち蕎麦屋に入ることにした。立ち蕎麦屋は好きなのだけど、かき揚げそばが500円をこえると入らないというルールのもと、入っていなかったのですが、ミニ丼はまだ安い方だったのだ。おとなになってもミニ丼だけ頼むという作戦である。
ミニ丼だけ頼むと、前の人のそばの注文に組み込まれて、前の人がミニ丼セットになったりする。
ミニ丼のみという人が少ないからだと思う。
喫茶店でケーキだけの注文はだめというルールはあったりするが、ミニだけの注文はだめではないのが多数派のように思う。
そんなとき、女がひとり入ってきて、そばを注文した。立ちそばやと言っても、椅子があることが多い。この店もいすがあり、一部立って食べるカウンターがある。その女は椅子が空いているのに、立って食べていた。
…やつはプロだ。昔「DJシューカイの現代立ち蕎麦論」というのを読んだことがある。井の頭Pastoralという雑誌に連載されていた。平たく言うと、立ち蕎麦屋の味を全身で感じるには立って食べることだ。正しい立ち蕎麦屋の活用方とでも言おうか。やつはそれだ。やつはプロだ。僕よりあとに来て先に出ていった。座ってミニ丼だけ食べている自分はなんなんだ。演芸でいうイロモノか。
メルヘン解釈
そういえば、僕も席空いているのに立って食べることがある。それはずっと座っていたときだ。そうだ、バイクだ。バイクずっと乗った後は、たってたべたくなるのだ。あの女はバイク乗りだったかもしれない。路駐で食べていたのだ。
新橋駅に向かう途中、バイクの音がした。
「田中屋の立ち蕎麦漂流記」より
作者紹介
田中宏明 1980年生まれ 東京都昭島市出身の週末の写真家・放送作家。
2003年 日本大学文理学部応用数学科 ぎりぎり卒業。下北沢・吉祥寺での売れないバンドマン生活を経て、会社員(番組制作→不動産業)となる。
◆写真家:シティスナップとかるーい読物「井の頭Pastoral」撮影・編集
◆放送作家:ラジオドラマ「湘南サラリーマン女子」原作・脚本 オールデイズ直江津Radioで放送
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