プチロマン小説
予算の都合上住みたい町より一駅離れた町に住みはじめた。
そんな一駅を埋める短編小説。
お楽しみください。
連載プチロマン小説
“女が電話に出ない時”
少年雑記盤
作/奈良あひる
柱:電車の外の夜景、時おりラブホテルが通りすぎていく
○男は電車の窓の外を眺め、携帯に目をうつす。
男はメールを送る「仕事おわった?」
男はメールを送り、30分後に女から返信が来た。
「今終わった」
男「今からいくわ」
女「電車あるの?」
男「まぁ、あるよ」
男は終電に乗り込み、すでに新宿へ向かっていた。すこしばかり迷ったせいで、終電は新宿まではいかなかった。今終わったというメールをもらったときは、すでに、そこから新大久保に向かって歩いているときであった。水商売の女はきまぐれだから、会えるかなんてわからない。それでも、気候がよかったので、とりあえず向かったのだ。
柱:終電後の新大久保駅前、人はまばら、外国人も多い
○男、女を見つけて声をかける
男「おつかれー!」
女「うん、どこいきますか?」
男「といりあえずご飯だな、ジョナサンいこう、その辺にあったでしょ」
女「いいですよ」
男は終電後の都会を歩くなんて、なんだか青春を謳歌しているようでもあった。
柱:ファミリーレストラン、各テーブルそれぞれの会話
○注文したものが運ばれ、食べ始める。
女「私こういうのお店が好き。ファミレスぐらいのところでいいの」
女はぎりぎりのところで、ため息を出さなかった口調である。
女は水商売の女、同伴・アフターなど、男はカッコつけてちょっといい店をセレクトする。寿司・天ぷら・鰻・高級イタリアン・高級フレンチ・割烹。
うまいかどうかはおいといて、高級という言葉を匂わせたお店だ。
男「みんな、いいとこ連れてってくれるでしょ。たのしいじゃん」
女「…」
男「俺はファミレスが好きだね。まぁ、田舎の文化かな」
女「みんな、いいとこ連れってくれて、お店でもお金つかってさ、それでも、私はその人のものにはならないですから」
男「お金持っている人は使えばいいさ。それはありがたく使わせればいいよ。俺なんて、終電なくなったけど、タクシー使わずけちって、歩いてきたよ、ここまで、なのですっぽかされなくてよかったよ。夜の女はこわいから」
女「すっぽかさないですよ。夜の女も普通ですよ」
女の携帯電話が鳴った。
つづく
青春プチロマン小説とは
日活ロマンポルノの影響で、映画としての立ち位置でお送りする、官能小説というジャンルです。