田中屋の夕刻日誌「ビーフカレーにビーフは入っているのか」文/田中宏明

夕刻日誌
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夕刻日誌

ビーフカレーを注文した

ビーフカレーを頼んで、運ばれてきたものには、ビーフが入っているようには見えなかった。

ウウェイトレスへ

「おいおい、ビーフがはいってないよ」とたずねたらなんて返ってくるだろうか。

「うぐいすパンにうぐいす入ってるんですか?」

それとも「ビーフはすでにカレーに溶けています」なんて言われるかもしれない。

そのどちらに対してもエレガントで華麗な返答をいなければいけないのである。カレーなだけに

華麗に返答

まず、うぐいすパンへの返答

「では、ビーフカレーと呼ばれるようになったルーツを教えて下さい。それでビーフが入っていることにします」

なんて言ってもおもしろくない。論破のはなしではないのだ。

そもそも、ビーフって入っているのかというところに注視したい。

それは名前〜ビューティフル・ネーム

名前なんてそもそもそんなものだ。願いを込めているのかもしれない。ビーフみたいになりたいって。

僕の名前だって、今の自分がそれになっているかなんてわからない。なので、名付け親の願いみたいなこともある。

「いいなまえですね。ビーフカレーの名前の由来はなんですか?」がいいんじゃないかな。

カレーに溶けたと言われた場合

これは、うそかほんとかわからないメルヘンの世界に誘っている。乙女心である。

すべて乙女心

「そうか、溶けたかぁ。西へ西へと行けば、ゴミも生活排水も悲しみも怒りや不安もすべて流せる川があるときいたよ。夏の恋も、失恋もすべて夏の暑さに溶けてしまってやがて、秋がくるように。ビーフはカレーに溶けたか。それでいい。それでいいだよ。人生はまだそれからだ」といって、ビーフが入っているかどうかなんてどうでもいいスケールで物事を考えることが必要なのである。

谷川岳のビーフカレーを前に

文/田中宏明(写真家)

谷川岳サービスエリア 下り

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