=田中屋式短歌= 松尾芭蕉に嫉妬して、バイクで旅して俳句するロードエッセイシリーズ。約30文字のメルヘンツーリングへようこそ
俳句
意味なとこ だれより早く 気づけるか
ストロー仕掛けに 漏れ防止
解説
ヒロシはマクドナルドに育てられたようなものだった。
部屋に冷暖房がないので、寒いときマクドナルド、暑いときマクドナルド、勉強もマクドナルド、作詞も、漫才台本も。
宅建も電気工事士もマクドナルで勉強した。
それまでは飲み物だけだったが、就職してからはハッピーセットを注文するようになっていた。
そういえば、ハッピーセットって子どもでなくても頼めるんだ、なんて自分で思ったこともあるし、人に言われたこともある。ハッピーなセットであって、お子様ランチ的な立ち位置ではないのだ。
ハッピーセットを頼むときはシェイクを頼むときが多い。何となくお得感を感じるから。それでも年も取って、あんまり甘いもの飲むのはなぁなんて思って、結局牛乳にすることもある。
その次やっとCOFFEEだ。あの灰皿に押し付けたタバコのようなの味のするコーヒー。
そのとき、はじめて知った。ハッピーセットにコーヒーは選べない。紅茶も選べない。
そうだ、やっぱり子ども向けというコンセプトがあるのだ。その証拠のような出来事だった。
それでこの日はミルクにした。
そしてまた気づくことがある。
ストローに筋みたいなのが入っている。
おそらくこれは空気を逃がすためのものだろう。こういうパックは、子どもが握って中身がこぼれるというベタが起きる。当然うちでもそういうことが起きている。おれがだ、解決しているのだ。この細工によって。
マクドナルドはその辺やっぱりすごい。
紙ストローを取り入れて、うまくいかず廃止して。
いつの間には一周しているのである。
マクドナルドで勉強するというのは、そういう発想の刺激に、潜在的になっていて、適しているのかもしれないと思うほどだ。
メルヘン解釈
本来、飲食店を勉強に使うのはあんまり良しとしていなかったが、自分もその波に飲まれてしまった。
マクドナルドは今や自習室である。
作者紹介
田中宏明 1980年生まれ 東京都昭島市出身の週末の写真家・放送作家。
2003年 日本大学文理学部応用数学科 ぎりぎり卒業。下北沢・吉祥寺での売れないバンドマン生活を経て、会社員(番組制作→不動産業)となる。
◆写真家:シティスナップとかるーい読物「井の頭Pastoral」撮影・編集
◆放送作家:ラジオドラマ「湘南サラリーマン女子」原作・脚本 オールデイズ直江津Radioで放送