ここ5年ぐらい前だったかな、シャンソンを歌っている人を見かけたのです。自分よりも若い人でさ、それにしびれてちまってよぉ、阿佐ヶ谷の喫茶で。
今まで音楽をやっていて、シャンソンを歌っている人はいなかったんですよね。自分の知っている名前だと、美輪明宏しか思い付かない僕の教養です(もっと、好奇心をもて!)。
美輪明宏のレコードやCDは何枚か持っていたけど、それは音楽の自作自演家(美輪明宏は日本で最初のシンガーソングライターとも言われているらしい)として聞いていて、シャンソンを歌っているのには、つまりカバー曲には興味がなかったのです、当時は。
美輪明宏といえば、銀座の銀巴里と呼ばれる店でうたっていたと聞きますが、そんな店はとっくにございません。銀座は文化を終わらせる町なのであります。
それでも、銀座の地下のシャンソン喫茶へ行ってみたのです。なぜか、ここはやっぱ銀座ってのがいいな思ったのです。ミーハー的にね。
そのときの影響を受けてできたのが、「荻窪純喫茶ストーリー」です。田中式とシャンソンでございます。
そういえば、紅の豚で流れるあの歌もシャンソンかもと、ふと思いました。
文・写真/田中宏明