青春プチロマン小説 「私は商社の女、本日、半ドン出勤」作/奈良あひる            

短篇小説
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その後、有楽町交通会館の喫茶店で読みかけの本を読んでいた。どうも全然展開が乏しい。全然集中できない、それでもよかった、今日の出来事は、本がメインではない。

私はある男へラインを送った。
出逢ってもう3年、私の事を好きだという男である。

機嫌よく男はやってきた。
コーヒーを1杯頼み、私たちはサイゼリヤへ移動した。

男「連絡くれるなんて珍しいな」
女「彼と別れたからね」
男「…どこで出逢ったの?」
女「SNS、そしてすぐ私のマンションに転がり込んできた」
男「年は?」
女「2歳ぐらい年下、子供いたけど離婚していて、いろいろ経験豊富って感じで」

年下の男と暮らしていたのよ。そりゃ男と女なんだからいろいろなことをした。想像してる?おの男とはいとも簡単に出逢い、寝た。
リズムよく寝るという行為に流れることも気持ちいし、地方の男性特有のうまさがあった。

前から私に行為を寄せているこの男とはそういう関係になってない。そういうタイミングにもなっていない。

男「そうか、青春だね」
この男はいつも青春だねと口にする。それは青春なのか。

女「彼女はいないの?」
男「いない」
女「いつから?」
男「あれからずっと」

あれから…。わたしは絶対こんな男とは付き合わない。
あれから誰とも付き合っていない男なんてダメ。私は絶対に幸せになる。この男とは向上心が違う。積極的に男に近づき、たくさんの男と寝ている。

女「今日ね台湾へ出張している人が日本に帰ってきていて、これから17時東京駅で待ち合わせなの」
男「そうか」

女「そう…。そろそろいくね」
男「なぁ」
女「なに?」
男「付き合ってくれ」
女「はやく他の人を探さなきゃね」

山手線でひと駅。今日はこれから会う人とセックスをすることになると思う。たぶん、いわゆるラブホテルではないホテル。ラブがあるかどうかはあんまり関係なくて。ホテルが大事。


私に好意を寄せている人がいると知った上で、私に好意があるのかないのかよく分からないひととしてしまうのは気持ちがいい。いつからか知ってた、それが私にとっての優位性。

男からしてみれば、好きな女が軽はずみにたまたまそこにいた人としてしまうの。それを想像してひとりでしているのがあの男には似合っている。

またね。

おわり

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