青春プチロマン小説「結婚後にもう一度」第11話 作/奈良あひる

短篇小説
短篇小説

ボーカル「動画撮ってたよ。女」

三奈「何の動画?」

ボーカル「してるところ」

三奈は返せなくなった。

どこかのだれかとしている。

それを動画に撮っている。

ボーカル「ところで、今日か明日どうする?」

ボーカルは話を戻した。それにちょっと安心した。

安心したと言っても、そのラインにリアクションしなくて済むことに安心しただけで、これから何がおきるかについては、安心でも動揺でもない。

なんだろう、恋にしているような気がする。

ちょっと息苦しくて、ワクワクしている。

三奈「今日でも大丈夫」

待ち合わせはお互い慣れたものだった。

駅だけ決めれば、その駅のどこなのかなんて確認しなくても落ち会えた。

「どこか行きたいとこある」

「どこでもいい」

「じゃあホテルいこうか」

「さっきまで他の女の子としてたんでしょ」

「そうだよ。なにかある?」

「なんでもないけど」

あの頃と特別変わったことはなかった。キスをして、お互い脱がせて、愛撫し合って。

ただ少しだけ違うことがあった。

彼はいれる前に言った

「あ、おれ結婚したんだよ。この何年かあってない間」

「そう」

三奈、たいして驚いていない振りをした。そんなことぐらいあってもおかしくはない。

今妻は妊娠してる。

三奈はそれには驚いた。

この男は、セックスの状況設定で嘘をつくときがあった。それははじめは嘘がどうかわからないものであった。あるときは嘘と気づき、あるときは嘘か本当かわからないまま、二人で上り詰めたこともある。

三奈はそれが嫌いではなかった。いや、それが好きだった。だからこうしてまた、やっぱり体を重ねている。

さっきの、女としていたというのも嘘かもしれない、ホントかもしれない。どちらにしろ、三奈を欲情させるために言ったものと思っている。

彼は続けて言った。

つづく

奈良あひる

1990年生まれ 

タイトルとURLをコピーしました